ヒルドイドは、アトピー性皮膚炎の治療に多く用いられている塗り薬です。アトピーにはさまざまな症状がありますが、代表的なのが皮膚炎でしょう。アトピーに悩んでいる人にとって、ヒルドイドは欠かせない医薬品です。
まず初めに、アトピー性皮膚炎の原因と症状を見ていきましょう。続いて、ヒルドイドのアトピーに対する効果を解説。また、ヒルドイドを塗ってアトピーが悪化してしまうケースについて、考えられる原因を説明します。
もくじ
アトピーの原因と症状
アトピー性皮膚炎は、皮膚のバリア機能が低下し、免疫反応が過剰になって起こります。アトピーによって起こる症状は、湿疹や皮膚の剥がれです。年齢層によっても、症状が異なります。
アトピーの原因はバリア機能の低下
アトピーの症状は、皮膚のバリア機能が低いために起こります。本来、皮膚は以下の物質や組織によって守られています。
物質・組織の名前 | 説明 |
天然保湿因子 | 角質層にある成分 水分を守る保湿物質 |
皮脂 | 皮脂腺から分泌される油状の物質 |
皮脂膜 | 水分の蒸発を防ぐ皮膚の膜 |
角質細胞間脂質 | 角質細胞の間にある脂質 肌内部の水分蒸発を防ぐ |
これらのバリア機能は、皮膚を刺激から守ったり、水分の蒸発による乾燥を防いだりしています。
しかし、アトピー体質の人は、皮膚のバリア機能が低下した状態になっています。その結果、免疫反応が過剰となり、本来は退治する必要のない物質にも反応するため、炎症が起こってしまうのです。炎症により強いかゆみが生じ、皮膚を引っ掻いてしまうと、さらなるバリア機能の低下を招きます。
アトピー性皮膚炎の症状
アトピー性皮膚炎には、さまざまな症状が見られます。主に、以下のような症状が皮膚にあらわれます。
- 乾燥
- かゆみ
- 皮膚の剥がれ
- 湿疹
- 小さなブツブツ
- 赤み
- 水ぶくれ
- かきむしった傷
アトピーは、患者の年齢によって症状が異なります。一般的には子供の頃に発症し、成人になると症状が和らぐ傾向にあります。しかし、成人になってから再発するケースもあるのです。
乳児期(1歳未満)のアトピーの特徴
乳児期の赤ちゃんの場合、頭や顔からアトピーの症状が出はじめます。特に、頬や口の周りに多くの湿疹ができるのが特徴です。
幼児期(1歳から6歳頃)のアトピーの特徴
小児期になるとヒザやヒジなど、四肢の関節にアトピーの症状があらわれるようになります。また、耳の付け根に発疹ができたり、あかぎれのような症状があらわれたりします。
思春期・成人期のアトピーの特徴
思春期から成人期では、下半身よりも上半身の症状がひどくなります。胸から背中にかけて、発疹の症状が強く見られます。
ヒルドイドのアトピーへの効果
ヒルドイドは、皮膚を保湿することで乾燥を防ぎ、バリア機能を高めます。これにより、皮膚の剥がれやかゆみを抑える効果を示すのです。炎症がひどい場合は、ステロイドとの併用が推奨されています。
皮膚のバリア機能を回復
ヒルドイドは、アトピーで低下した皮膚のバリア機能を回復させます。
ヒルドイドの主成分であるヘパリン類似物質は、角質細胞間脂質のラメラ構造の回復を促進します。角質細胞間脂質は、油分と水分が交互に並んだ層になっています。この層になった構造をラメラ構造と呼ぶのです。ラメラ構造の層が整っていることで、バリア機能が高まります。
また、ヒルドイドには、天然保湿因子や角質層の水分量を増やし、肌を保湿する作用もあります。乾燥して弱った肌の水分を補い、肌を健やかな状態に導くのです。
皮膚の剥がれ・かゆみに効く
ヒルドイドは、アトピーによる皮膚の剥がれやかゆみに効果を示します。
例えば、乾燥した皮膚が剥がれ落ちる症状は、ヒルドイドの高い保湿力で改善できます。また、アトピー肌のかゆみを抑える効果もあるとされています。
ヒルドイドはかゆみ止めではありませんが、保湿によってバリア機能が高まると、外的刺激に強い肌になるのです。そのため、アトピーで弱っていた肌が感じていた刺激でも、かゆみを感じなくなります。
炎症がひどければステロイドを併用
アトピーによる炎症がひどい場合、ヒルドイドのみでは改善できません。アトピーで皮膚に強い炎症が起こっているときは、ヒルドイドとステロイドの併用が勧められています。
また、かきむしって傷口になったしまった部分、あかぎれで血が出ている部分などには、ヒルドイドは使用しないでください。
ヒルドイドとステロイド剤を併用する際は、先にヒルドイドを塗りましょう。
ヒルドイドは全身の保湿のために使うので、体の広い範囲に塗り広げます。そのため、ステロイド剤を先に塗ると、後からヒルドイドを塗った際、不要な部位にまで広がってしまいます。
不要な部分にまでステロイドがつくことで、副作用が起こりやすくなるのです。ステロイドは、湿疹などの症状がある部分にだけ塗りましょう。
ヒルドイドでアトピーが悪化する理由
アトピー体質の人がヒルドイドを使用することで、症状が悪化するケースも見られます。どの医薬品でも言えることですが、肌や体質に合わず、かえって刺激になってしまうこともあるためです。また、ヒルドイドを塗る量が少なすぎたり、逆に多すぎたりといった可能性もあります。
肌質や体質に合っていない
ヒルドイドを塗ってアトピーが悪化してしまったなら、自身の肌に合っていないことが理由だと考えられます。
ヒルドイドは副作用が少なく、赤ちゃんでも使用できる保湿剤です。刺激が弱いので、本来ならアトピーが悪化する危険性はあまりないと言えるでしょう。
しかし、体質によってはヒルドイドが刺激になり、肌が炎症を起こしてしまう人もいます。万が一、ヒルドイドを塗って皮膚に異常があった場合は、すぐに使用を止めて医師に相談してください。
ヒルドイドを塗る量にも注意
アトピー肌は敏感なので、ヒルドイドを塗る量にも注意しましょう。
ヒルドイドを塗る量が少なすぎると、皮膚との摩擦が生じやすくなり、アトピーを悪化させる原因になり得ます。だからといって、大量に塗りすぎても、ヒルドイドの成分が刺激になってしまう可能性もあります。
ヒルドイドを使う際は、適量を守ってください。また、清潔な手で優しく塗り広げるようにしましょう。
まとめ
アトピー性皮膚炎の原因は、皮膚のバリア機能が低いことです。これにより、免疫反応が過剰になって、皮膚の炎症などが起こります。
ヒルドイドは肌を保湿し、バリア機能を回復させ、アトピー肌を守ります。アトピーによって起こる乾燥肌やかゆみ、皮膚の剥がれなどの改善に効果的です。皮膚の炎症がひどい場合は、ステロイドを併用しましょう。
ヒルドイドを塗ってからアトピーが悪化した場合、自身の肌に合っていないと考えられます。また、ヒルドイドを塗る量が少なすぎたり多すぎたりしても、皮膚の負担になります。アトピーが悪化してしまったら、医師や薬剤師に相談してください。